タンペレ・デック・アリーナ
市内中心部の線路の上にあるユニークなアクティビティ複合施設
タンペレ・デック・アリーナプロジェクトは、フィンランドで3番目に大きい市の中央駅周辺で行われている大規模開発の一部です。タンペレ中心部の線路の上に誕生したユニークなアクティビティ複合施設の建設は、国際的なレベルで見ても非常に特異で困難なプロジェクトでした。
開発の総面積は、125,900 平方メートルにも及び、2ヘクタール以上に広がる新しいデッキは、約17,000人の観客を収容できる多目的アリーナ、オフィス、小売店舗、アパートメント、ホテル、カジノをサポートしており、トレーニング施設や駐車場などもプロジェクトの一環として建設されました。
プロジェクトチームは、メインの請負業者であるSRV Rakennus Oy、建築デザインを担当する ARCO Tampere (元 Aihio Arkkitehdit Oy)、設備関係を担当するRamboll Finland Oyで構成されており、構造、基礎、設備、電気、インフラ等を担当しました。建設規模の大きさ、様々な設計要件に伴う複雑さ、プロジェクト関係者の数、そして担当範囲の重複等がプロジェクトの課題でしたが、様々なBIMモデルを組み合わせることで、これらの課題を解決しました。
設計者が直面した課題のひとつは、この規模のプロジェクトになるとBIMの活用なしでは管理できなかったであろう干渉問題の調整でした。BIMを活用する事で、線路周辺の構造物や、天井と設備の位置調整を問題無く行うことができました。
全ての設計にBIMを活用
このプロジェクトには多数のエンジニアが参加し、建設の決定事項を説明する際には高度なBIMソフトウェアが役立ちました。またBIMソフトウェアの活用により、設計者やその他のプロジェクト関係者が、設計やプロジェクト管理といった主要な業務に専念することができました。
地盤工学設計では、フィンランドの一般的な InfraBIM 要件に準拠した非常に広範な初期データ モデルが、敷地、土壌の地質調査、トラックジオメトリ、地下構造物(ワイヤ、ケーブル、パイプラインを含む)、地上構造物(橋、道路、建物、軌道側の設備/部品を含む)、ドローンの撮影を含むエリアのために作成されました。地盤工学モデリングには、鋼板、親杭、ジェットグラウト壁、ドライライニング、主要な水道、下水道、雨水、ケーブル、地域の暖冷房パイプラインの設計、必要な場合には施工後モデルの作成も含まれています。
コンクリートデッキの下側には、線路を支える梁とその他多数の重要な設備が配置されていたため、それぞれの梁は正しい形状で正確な位置にモデリングする必要がありました。これにより電化された鉄道路線と設備との干渉を防ぎ、安全を考慮した距離を確保することができました。デッキのネイティブ モデルはビジュアル アルゴリズム エディターを使用して生成されました。
デッキの設計から建設の間、プロジェクト管理者はBIMを活用することにより、設計、建設、資材配送の3つのステータス進捗状況を正確に把握することができました。コミュニケーションは、Teklaのネイティブモデルとモデルシェアリングが使用され、請負業者も作業の進捗状況をリアルタイムで把握することができました。これにより、鉄筋の発注や工事の進捗管理など、BIMをベースとした工程や作業者のスケジュール調整が可能となりました。
モデルは下水道とデッキ構造の適合確認にも役立ちました。照明システムは、フィンランドの設計基準に従ってモデル化されています。アリーナ周辺のデッキ下の施設のモデリングや、アルゴリズムに基づいたファサードクラッディングの設計や製作にも役立っています。さらに各座席からアリーナまでの視界を遮るものがない状況を確認することにも役立っています。
現場スタッフは現場に入る前に、統合されたモデルを常に利用することができ、現場の進捗状況は、モデル内の標準化されたデータコンテンツにより、現場の進捗状況が各部屋で監視されていました。BIMは現場計画の作成や新しいスタッフへの現場の理解を高めることにも使われ、労働安全性も向上しました。
アリーナは絶好のロケーションにあるため、観客は、車やその他のさまざまな方法で会場にアクセスすることができます。アイスホッケーのチケットは公共交通機関にも適用され、イベント開催中は交通規制により、徒歩での来場が推奨されます。
シミュレーションは、通常の状況だけではなく、イベント中の歩行者の数やその他の交通システムの交通量の規制に役立ちました。