Helsinki Gramofoni フィンランド、ヘルシンキ
BIM プロジェクトをコアまで Helsinki Gramofoniは、新しい住居用建物で、ヘルシンキのセントラルパークの横にあるLänsi-Pasila地域に2011年秋に完成する予定です。将来の住居者は、この新しい住居の設計および建設にどれほどの高いレベルの技術と最先端の専門知識がつぎ込まれているかを完全に理解することはないでしょう。外観的には、建物の見た目は他の住居用建物と大きな変わりはありませんが、最初から最後まで、BIM (Building Information Modeling)プロジェクトがコアにまで用いられた特別な建物なのです。構造エンジニアのYlimäki & Tinkanen社は、2010年にGramofoni構造設計によってTeklaフィンランドのコンペで受賞しました。
プレキャストフレームの住居用建物
Helsinki Gramofoniは、プレキャストコンクリート構造の住居用建物で、5/6階建ての地盤で支持されたフーチング基礎を採用した建物です。建物の下部には、あらかじめ建設されたアクセストンネルがあります。地下室は駐車場と倉庫などになっています。避難シェルターは、隣接する建物にあります。外側の壁は、プレキャスト内殻でできており、表面はレンガ張りで、中間床は中空スラブでできています。全体の建物の構造および材質設計は、Tekla Structuresソフトウェアを使用して行われました。あらかじめ建設されたアクセストンネルは、建物の下部を通過しており、これは建設計画と実行にとって課題となりました。同じことは、他の建設よりも住居用建物の建設の場合には特にそう言えます。現場で理解できるように建物情報モデルをかなり明確にする必要があるからです。設計段階では、これらのことは、従来の製図方式では実現することはできませんでした。
Teklaモデルコンペの受賞者
Teklaのコンペの審査員は、Gramofoniのモデリングプロセスはすべての面で革新的な要素を備えており、そのモデルでBIMが最も先進的に使用されていると述べました。このプロジェクトは、通常の住居用建物でさせ効果的にモデリングできることを示しており、コラボレーションプロセスとして、BIMの本質に焦点をあてるものとなっています。コンペ全体の革新性の判断基準には、Teklaモデルの使用量、モデルおよび構造の材料の多様性(同一のモデルに鋼鉄とコンクリートが含まれる)、プロジェクトの各チーム間のコラボレーションとコミュニケーション、マルチユーザー機能の適用、およびBIMプロセスのスムーズさなどが含まれていました。
すべてのプロジェクトチームおよび詳細が含まれる
プロジェクト期間中、すべてのプロジェクトチームがBIMソフトウェアを使用しました。設計業者のVuorelma Arkkitehdit Oy社は、構造エンジニアYlimäki & Tinkanen社が具体化し、Tekla Structuresで作成した正確な構造モデルを基にして、建物の詳細な建設モデルを作成しました。建物のHVACおよび電気エンジニアリングモデルは非常に正確で、この正確にモデリングされた建物の電子エンジニアリングモデルには、すべての壁コンセントや照明スイッチが含まれているほどでした。それでも、構造設計エンジニアと電気エンジニアのコミュニケーションは、これまで2D図面を使用して行われていました。
建設業者のSkanska社は、別の設計セクターのモデルが非常に有用であることに気付くようになりました。例えば、現場管理およびスケジュール管理にTekla Structuresが使用されていました。「当社は、信頼できる建設管理と有効なスケジュール管理を求めていました。設計から矛盾点やミスを確実に排除することを求めていました。建物情報モデリングは、この点に関して議論の余地のない益を提供しています。」とSkanska社のBIM Competence Centerの責任者、開発部長であるIlkka Romo氏は語っています。
住居用建物開発の標準化
BIMの観点では、住居用建物開発は、オフィス用建物開発に比べ、より多くの課題があります。住居用建物には、階段、外壁、バルコニー、および他の外観上の特性など、多くの詳細情報含まれ、多くの余分の作業が必要になります。階段の踏み台スラブを壁に取り付ける方法を、非常に注意深く計画する必要があります。このため、プレキャストモデルに個別に切り込みを入れることが必要になります。特に、床面スラブの接続部および最上部のスラブと周囲の建造物の接続部も注意深く詳細化して、適切な防音機能が確保されるようにする必要があります。住居用建物の1つのプレキャストユニットには、例えば、ユニットのサポートおよび取り付けなどに関する大量の詳細が含まれることがあります。これらは、設計段階で正確で精密に位置調整されている必要があります。一方、住居用建物建設において、各現場ごとに同一の原則やプロセスを使用する必要があります。多数の標準化コンポーネント、強化部品、および鋼鉄部品があります。
Ilkka Romo氏は、次のように語っています。「住居用建物の開発の標準化に関し、モデリングによってプロセスが注意深く検討されるため、実際に大きな利点が実現されます。これにより、設計ライブラリおよび標準ツールの開発が可能になり、対象に最大限に注力することができます。当社の目標は、モデルを標準化して、特定のコンポーネントを常に同一にすることです。例えば、プロジェクトに関係なく、現場の領域計画で同一の色付けを使用する必要があります。私の意見では、BIMの最大の課題の1つは、ツールを使用する熟練した設計者が不足していることです。キャパシティ不足、つまり十分なモデリング能力の不足が開発を遅くしているのです。」
新しい種類の能力
特に、エンジニアリングオフィスでは、徹底したBIMトレーニングは莫大な投資となります。建物情報モデルの作成は難しく、まったく新しい能力が必要になるからです。一方、設計ツールはすべての面で十分に発展されてきたとは言えないため、現在のモデリングには最も大きな困難が伴うと言えるでしょう。ソフトウェアを改善するため、Skanska社は、Teklaなどのソフトウェアメーカーと緊密に協力してきました。
「残念なことに、建物情報モデルを処理するサプライチェーンのキャパシティは非常に限られています。Skanskaは、プロジェクトの常設チームを指定することでこの状況の改善に取り組んでいます。建物システムおよび設計の両方において、コラボレーションは会社レベルだけでなく、個人レベルでも追及されています。」とIlkka Romo氏は語っています。Skanska社の開発ペースは速く、BIMチームのプロジェクトマネージャーであるJouni Muukkonen氏は、2週間に一度現場を訪問して、開発に関する提案やニーズをヒアリングしています。
変更管理、設計の課題
プレキャストユニットの詳細管理は、特に変更管理は、プロジェクト設計の課題とされてきました。「モデルには、1つのプレキャストユニットに対して大量のデータが含まれており、データの管理には設計のち密さが必要になります。住居用建物の構造設計モデリングプロセスは、少し研磨することが必要なダイアモンドに似ています」と構造設計者であるMiikael Nelimarkka氏は語っています。
「2Dの世界では、プレキャストユニットの設計技術は既に高度に完成されていましたが、新しい作業手法は、設計プロセスを新たに学び変更する必要性をもたらしました。」とMiikael Nelimarkka氏は語っています。しかし、彼は3D建物情報モデルの議論の余地のない利点は、全員が同じ方法で設計を確認できる点にあると指摘しています。「これは一見すると奇妙に思えますが、これが3Dの利点なのです。これにより、大幅にミスや矛盾点を減らすことができます。」
すべての設計セクターからのモデルを使用することが設計に役立つことが証明されてきました。例えば、構造モデルに関するHVAC作業情報をIFCファイル形式でインポートすることによって、全体の設計監理が容易になり、他のソフトウェアからインポートした参照モデルを使用することで現場での矛盾の発生を回避することができました。
建設現場での結合モデル
現場で問題が発生したとき、コンピュータのスイッチを入れて、建物全体の結合モデルを表示させるほうが、図面の4つのバインダーを取り出して注意深く調べてから、図面を比較して問題点を見つけるよりもずっと簡単です。」とSkanska社の製造エンジニアのJanne Piepponen氏は語り、Gramofoniの現場でBIMがどのように使用されたかを示しています。
また、新しい作業者にとっても、モデルを使用して最終的な結果を視覚化するのがずっと容易になります。例えば、そのフロアについて説明している従来の紙図面から解読するよりもずっと簡単です。Janne Piepponen氏は次のように語っています。「もちろん、これは作業者自身にも依存することではあります。熟練した建設作業員は、従来の図面を見ただけで、たくさんの要素を素早く理解することができます。それに対し、経験の若い作業員は、コンピュータを使うことに慣れています。しかし、これは年齢の相違のために必ず生じるわけでもありません。一部の熟練した作業者もコンピュータを使用した手法に熟達するようになってきています。一方で、ソフトウェアのユーザーインターフェースがフィンランド語ではないため、英語を習得することも必要になっています。」
ミスと不要な無駄を排除する
s 一般に、現場でセクションポイントを決めなければならないときに、建物情報モデルが参照されます。モデルは、グラフィック図で表示され、どの部品をどこに配置すべきかが示されます。仰角や専有位置のミスは簡単に特定することができます。また、モデルは主なサプライヤーと共有されます。「当社は、現場でのエレベータや電気設備の取り付けや廃棄物管理を行うためにモデルを使用してきました」と現場監督のHarri Vesanto氏は述べています。
Gramofoniの現場は、混合廃棄物を出しません。廃棄物を注意深く分別することがその地域では要求されているからです。モデルは、どこに廃棄物用コンテナを配置すべきかを確認するのに便利です。同じことは、材料の保管管理についても言えます。モデルは、プレキャストユニットが一時的に使用されている場所を表示するため、実際に使用可能な場所をスポットで簡単に視覚化できます。さらに、保管情報も簡単に管理できるため、必要な資源をそれの使用が計画されている現場から遠く離れたところに置いていくということも避けることができます。物資の紛失も低減することができます。
「まだモデルだけに依存することはできていないため、当社は以前の手法と並行して使用しています」とHarri Vesanto氏は述べています。将来のシナリオでは、測定担当者が、異なる設計ツールからのすべてのプレキャストユニットデータを担当者の測定デバイスで受け取れるようになるはずです。「これにより、PDAを使用して歩き回りながら作業を行い、適切な場所に物資を導くことができるようになります。現時点では、このアイディアは滑稽に聞こえるかもしれませんが、いずれ将来的には当たり前のことと見なされるようになるでしょう。」